心に響く小さな物語

さとたん

2011年02月12日 12:20

私は、ご存知の通り、看護師の他に、生命保険の代理店もしています。


その代理店仲間である大阪在住のHさんから毎週土曜日に、


私のような代理店の仲間向けに“優しさ”や“思いやり”の心を感じさせてくれる


「優しさ通心」を配信して貰っています。


その話しが実に感動的で心に沁みるお話しばかりですので、


ここで紹介させて頂きます。


長文になりますので、お時間のある時にどうぞ・・



『出会いが人生を変える』


その先生が五年生の担任になった時、一人、服装が不潔でだらしなく、どうしても好きになれない少年がいた。

中間記録に先生は、少年の悪いところばかりを記入するようになっていた。

ある時、少年の一年生からの記録が目に止まった。

「ほがらかで、友達が好きで、人にも親切。勉強もよくでき、将来が楽しみ」とある。

間違いだ。他の子の記録に違いない。先生はそう思った。

二年生になると「母親が病気で世話をしなければならず、時々遅刻する」と書かれていた。

三年生では、「母親の病気が悪くなり、疲れていて、教室で居眠りをする」

三年生の後半の記録には、「母親が死亡。希望を失い、悲しんでいる」とあり、

四年生になると、「父は生きる意欲を失い、アルコール依存症となり、子どもに暴力をふるう」

先生の胸に激しい痛みが走った。

ダメだと決めつけていた子が突然、深い悲しみを生き抜いている生身の人間として自分の前に立ち現れてきたのだ。

先生にとって目を開かれた瞬間であった。

放課後、先生は少年に声をかけた。

「先生は夕方まで仕事をするから、あなたも勉強していかない?わからないところは教えてあげるから」

少年は初めて笑顔をを見せた。

それから毎日、少年は教室の自分の机で予習復習を熱心に続けた。

授業で少年が初めて手を上げた時、先生に大きな喜びがわき起こった。

少年は自信を持ち初めていた。

クリスマスの午後だった。少年が小さな包みを先生の胸に押しつけてきた。

後で開けてみると、香水の瓶だった。亡くなったお母さんが使っていたものに違いない。

先生はその一滴をつけ、夕暮れに少年の家を訪ねた。

雑然とした部屋で一人、本を読んでいた少年は先生に気づくと飛んできて、先生の胸に顔をうずめて叫んだ。

「ああ、お母さんの匂い!今日は素敵なクリスマスだ」

六年生では先生は少年の担任ではなくなった。

卒業の時、先生に少年から一枚のカードが届いた。

「先生は僕のお母さんのようです。そして、今まで出会った中で一番素晴らしい先生でした。

それから六年、またカードが届いた。

「明日は高校の卒業式です。僕は五年生で先生に担当してもらって、とても幸せでした。おかげで奨学金をもらって医学部に進学することができます。」

十年を経て、またカードがきた。

そこには先生と出会えたことへの感謝と、父親に叩かれた体験があるから、患者の痛みがわかる医者になれると記され、こう締めくくられていた。

「僕は、よく五年生の時の先生を思い出します。あのままダメになってしまう僕を救って下さった先生を、神様のように感じます。

大人になり、医者になった僕にとって最高の先生は、五年生の時に担任して下さった先生です」

そして一年。

届いたカードは結婚式の招待状だった。

「母の席に座って下さい」と一行、書き添えられていた。



「心に響く小さな物語」
致知出版社より


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